研究内容 CONTENT
A03 丹羽班
生殖幹細胞インテグリティ制御におけるホルモンと神経伝達物質の役割の解明
卵は次世代に生命を継承する役割を担っており、適切にその形成過程が適切に制御されることはヒトを含むあらゆる種の繁栄に重要である。卵が質と量の両面において安定的に供給されるためには、卵の大本となるメス生殖幹細胞(Female Germline Stem Cell; fGSC)の適切な増殖と維持が鍵である。従来、fGSCの増殖と維持には、fGSC周囲の細胞によって構成されるローカルな環境「ニッチ」から出るシグナル、いわゆるニッチシグナルが重要であることが、多くの研究から示されてきた。
一方で、応募者を含む複数のグループによるキイロショウジョウバエを用いた研究から、ニッチとは異なる組織や脳神経系に由来する遠距離シグナルが、ニッチを構成する体細胞によって受容されること、そしてその下流のシグナリングがfGSCの増殖と維持に必須であることが近年新たに見出されている。しかし、ホルモンや神経伝達物質のfGSCに対する作用に注目した研究がまだ多くない上に、応募者らによる研究も端緒的な遺伝学的解析に留まっている。すなわち、ホルモンや神経伝達物質の複合的な作用をfGSCインテグリティのコンテクストで包括的に解析した例は皆無に等しい。
そこで本申請研究では、応募者の研究を含む先行研究で同定されている4種類の液性因子に注目し、これらの因子のクロストークによるfGSCの増殖と維持のメカニズムの解明を目指す。特に本研究では、個体レベルの遺伝学的表現型解析のみならず、応募者らが独自に確立した生体外(ex vivo)卵巣培養系を活用することで、ホルモンと神経伝達物質の複合的作用を包括的に解明する。

研究組織
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- 氏 名
- 丹羽 隆介(研究代表者)
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- 所 属
- 筑波大学 生存ダイナミクス研究センター(TARAセンター)
主要論文
丹羽 隆介
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Endocrine regulation of female germline stem cells in the fruit fly Drosophila melanogaster.
Curr. Opin. Insect Sci. 31: 14-19. (2019)
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Midgut-derived neuropeptide F controls germline stem cell proliferation in a mating-dependent manner.
PLOS Biol. 16: e2005004. (2018)
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Mating-induced increase in germline stem cells via the neuroendocrine system in female Drosophila.
PLOS Genet. 12: e1006123. (2016)
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The Drosophila zinc finger transcription factor Ouija Board controls ecdysteroid biosynthesis through specific regulation of spookier.
PLOS Genet. 11: e1005712. (2015)
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Serotonergic neurons respond to nutrients and regulate the timing of steroid hormone biosynthesis in Drosophila.
Nature Commun. 5: 5778. (2014)