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A03-10 高瀬班

卵子成熟過程のインテグリティを支えるWntの原始卵胞活性化メカニズム

ヒトを含む哺乳類のメスにおいて妊娠を可能にし、卵子のインテグリティ(機能的な完全性)を担保するために必要不可欠なのは、精密に調節された卵胞形成である。原始卵胞はほとんどが休眠状態にあるが、ごく一部が活性化され、一次卵胞・二次卵胞・胞状卵胞と順に成長して排卵に至る。休眠状態にある原始卵胞は数年〜数十年の単位で生存可能だが、ひとたび活性化するとその寿命は数日〜数ヶ月といわれ、成熟し排卵に至るか、閉鎖され消えるかの運命を辿る。つまり、適切にコントロールされた原始卵胞の活性化が生殖には重要であり、原始卵胞の過剰な活性化は早発卵巣不全(primary ovarian insufficiency; POI)に繋がる。ところが、これまでにPI3K/AKT/mTORシグナル経路等が原始卵胞の活性化に必要であることが示されてはいるものの、活性化機構についての知見は非常に限定的である。したがって、卵胞形成過程の理解という観点からも、POIの原因究明および不妊治療への貢献という観点からも、原始卵胞の活性化機構の解明は重要な課題である。

本研究では、卵胞形成期のシグナル伝達経路を介した細胞間相互作用に焦点を当て、原始卵胞活性化の分子メカニズムを解明することを目標とする。予備的な実験結果より、原始卵胞の活性化にWntシグナルが重要な役割を果たしていることが予想された。この仮説を検証するため、全てのWnt分泌を抑制できる遺伝子改変マウス(in vivo)およびホールマウントの卵巣培養系(in vitro)を利用し、卵巣の生理的条件下でWntシグナルが原始卵胞の活性化に果たす役割を明らかにする。さらに、Wntシグナルを起点とした遺伝子発現のカスケードの同定、他のシグナル伝達とのクロストークの有無について探索する。最終的には、原始卵胞活性化時に重要な体細胞由来の因子について明らかにし、in vitro gametogenesisへ適用することを目指す。

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研究組織
  • 氏 名
    高瀬 比菜子(研究代表者)
  • 所 属
    理化学研究所・生命機能科学研究センター(BDR)・個体パターニング研究チーム
  • e-mail
    hinako.takase(at)riken.jp
主要論文

高瀬 比菜子

  • Kishi K, Uchida A, Takase HM, Suzuki H, Kurohmaru M, Tsunekawa N, Kanai-Azuma M, Wood SA, *Kanai Y.

    Spermatogonial deubiquitinase USP9X is essential for proper spermatogenesis in mice.

    Reproduction, 154, 135-143. (2017)

  • Uchida A, Kishi K, Aiyama Y, Miura K, Takase HM, Suzuki H, Kanai-Azuma M, Iwamori T, Kurohmaru M, Tsunekawa N, *Kanai Y.

    In vivo dynamics of GFRα1-positive spermatogonia stimulated by GDNF signals using a bead transplantation assay.

    Biochem Biophys Res Commun, 476, 546-552. (2016)

  • Hirate Y, Suzuki H, Kawasumi M, Takase HM, Igarashi H, Naquet P, Kanai Y, *Kanai-Azuma M.

    Mouse Sox17 haploinsufficiency leads to female subfertility due to impaired implantation.

    Sci Rep, 6, 24171. (2016)

  • Takase HM and *Nusse R.

    Paracrine Wnt/β-catenin signaling mediates proliferation of undifferentiated spermatogonia in the adult mouse testis.

    Proc Natl Acad Sci USA, 113, E1489-97. (2016)

  • §Takase HM, §Itoh T*, Ino S, Wang T, Koji T, Akira S, Takikawa Y, Miyajima A.

    FGF7 is a functional niche signal required for stimulation of adult liver progenitor cells that support liver regeneration.

    Genes Dev, 27, 169-81 (2013)

§Co-first authors

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